樽床、宮本両候補は「前」か「元」か──衆院大阪12区補選

 衆院大阪12区補欠選挙には、無所属の樽床伸二総務相と、共産党系無所属の宮本岳志氏が立候補していました。選挙報道では候補者の新旧を「現」(現職)、「前」(前職)、「元」(元職)、「新」(新人)の4パターンで表記するのが一般的ですが、この2氏について、各紙で表記が分かれています。

  • 「前」=朝日、読売、NHK、ANN、NNN
  • 「元」=毎日、産経、日経、共同、時事、JNNTXN

 FNNは、樽床氏については肩書の「元総務相」しか紹介しておらず、前・元ははっきりしませんが、宮本氏は「前衆院議員」と報じています。

 「前」も広い意味では「元」と言えますが、衆院解散に伴う総選挙の際では各社とも、解散で失職した候補を「前」で扱っていることから、今回「元」を採用した社が普段から「前」を使っていないわけではありません。

 一部報道機関は表記の社内基準集を公刊していますが、肩書の「前」「元」について記載があるのは読売、時事、共同の3社の基準集です。順番に見ていきます。

読売新聞

 「前」を採用した読売新聞の「読売新聞用字用語の手引第5版」(63〜64ページ)は次のように定めています。

 (1)「前」は、当人の直接の後任者が現職にある場合、または当人が辞任後まだ後任者が決まらない場合に使う。
 (2)「元」は、当人の直接の後任者が辞任した場合、副社長など複数ポストの人が辞めた場合、称号、身分、職業、制度などが変わった場合に使う。(後略)
 (3)選挙による公職(衆・参両院議員、地方議員、知事、市町村長など)の場合、解散、または任期満了後は、現職者は「前」となり、前職者は「元」となる。

 今回の補選は議員死去に伴うものなので(3)は関係ありません。(1)(2)で「後任者」というキーワードが出てきました。

 2017年の衆院総選挙で樽床氏は希望の党の、宮本氏は共産党のそれぞれ比例代表近畿ブロックで当選しました。よって2氏の辞職後それぞれ馬淵澄夫清水忠史両氏が繰り上げ当選し、現在も衆院議員です。よって「直接の後任者が現職にある」を満たしているので(1)の規定から「前」となります。

 衆院議員は「複数ポスト」と考えることもできるので(2)から「元」を使うという考え方も成立するようには思います。ただ、2017年に自民党衆院比例東海ブロックで当選し、刑事告訴されたことを受けて辞職した田畑毅氏についても「前衆院議員」*1と書いていますので、複数ポストという捉え方はしていないのではないかと思います。

共同通信

 「元」を使った共同通信「記者ハンドブック第13版新聞用字用語集」(535〜536ページ)はこちらです。

 (1)「前」は、当人の直接の後任者が現職にある場合、または当人が辞任後まだ後任者が決まらない場合に使う。(用例省略)
 (2)「元」は〈1〉当人の直接の後任者が辞めている場合〈2〉副社長など同じ地位に複数の人物がいる役職の人が辞めた場合〈3〉称号、身分、制度などが変更された場合〈4〉当人がある職業を辞めた場合―に使う。(用例省略)
 (中略)
 (5)選挙記事の国会議員、地方議員、知事、市町村長などは、解散または任期満了や辞任後、後任が就任するまでは「前」、それ以降は「元」となる。

 (5)のルールに当てはまります。樽床、宮本両氏の辞任後、すでに後任が就任していますので「元」となります。

 逆に、沖縄県知事選で玉城デニー氏が初当選した際の報道では、玉城氏の後任は決まっていませんでしたので「前衆院議員」と紹介されていました*2

時事通信

 さて、厄介なのが時事通信です。「元職」を採用していますが、「最新用字用語ブック第7版」(527〜528ページ)を見てみましょう。

 (1)「前」は、当人の直接の後任者が現職にある場合、また当人が辞任後まだ後任者が決まらない場合に使う。
   〔例〕○○前財務相 前衆院議員○○氏
 (2)「元」は当人の直接の後任者が辞めている場合や、称号、身分、職業、制度などが変わった場合に使う。(後略)
 (3)選挙による公職(衆参両院議員、地方議員、知事、市町村長など)の場合、解散または任期満了、解職後は、それまでの現職者は「前」となり、前職者は「元」となる。ただし、任期満了選挙で、任期切れの前に選挙が行われる場合は「現」「前」となる。

 (3)の規定については「解散または任期満了、解職後は」とありますので関係ないように見えます。とすると、「当人の直接の後任者が現職にある場合」に該当するので(1)が適用されて「前」となりそうです。(2)の「職業」に当てはまるので「元」なのかなとも思いましたが、(1)の用例で「前衆院議員」があるので矛盾します。

 議員辞職した田畑毅氏は「元衆院議員」*3としています。一方で2017年の衆院選で落選した松浪健太氏は「前衆院議員」*4、同選挙に出馬せず政界引退した赤枝恒雄氏も「前衆院議員」*5と紹介しています。

 よって、自ら辞職したかどうかで分かれるのかなとも推測したのですが、暴言問題で明石市長を辞職した泉房穂氏は、出直し選挙で当選した際「前市長」*6と報じられているので、謎は深まるばかりといった状況です。

その他

 その他、問い合わせで判明したものについて。

 「元」を使った毎日新聞は、選挙記事では同じ選挙区で前回の選挙で当選した人を「前」としているということです。樽床、宮本両氏は前回衆院選比例代表当選だったので、選挙区が違うということで「元」にしたという回答でした。

 同じく「元」を使った産経新聞は、そもそも選挙報道では「現」「元」「新」の3種表記を原則とし、任期切れ、首長辞職、議会解散に伴う選挙のみ「前」を使うというルールだそうです。

 「前」を使ったNHKは、「前」を使う場合は(1)解散総選挙の場合(2)衆参補選で現職議員が立候補するため辞職または自動失職した場合(3)首長や議員の任期途中辞職や不信任などによる失職を受けた選挙の場合──の3パターンとのことです。今回は(2)に当てはまるわけですね。

 同じく「前」を使った朝日新聞は前回選挙まで現職だったか、前回選挙で当選した後に辞職した場合は「前」として報じることになっているそうです。

一部JNN系列局が4月29日の夕方ローカルニュースを短縮

 異例の10連休となる今年のゴールデンウイークは、マスコミ業界の働き方改革の流れもあるのか、JNN系列の一部局で珍しい編成を組むところがでてきました。HBC北海道放送、TUTチューリップテレビMRO北陸放送、OBS大分放送MBC宮崎放送の5局が、4月29日午後6時台のローカルニュース枠を8〜15分間に短縮し、残りを再放送番組などで穴埋めする編成になることが判明しました。

 以下、民放公式テレビポータル「TVer」や各社ウェブサイトの番組表を参考に、「ひるおび!」の後から午後7時までの生放送ワイドを中心とした編成変更をまとめます。

  • HBC北海道放送 「今日ドキッ!」休止。「ゴゴスマ」フルネット、午後3時49分「Nスタ」、6時15分「HBCニュース」、25分「ガッチャンコHBC」、30分「今日ドキッ!SP 腹ペコ石ちゃん」(コーナー傑作選)
  • ATV青森テレビ 午後3時55分「あおもり平成の記憶〜そして令和へ〜」(特番)、4時50分「わっち!!」、以降通常編成
  • IBC岩手放送 通常編成
  • TBC東北放送 通常編成
  • TUYテレビユー山形 通常編成
  • TUFテレビユー福島 通常編成
  • TBSテレビ 通常編成
  • BSN新潟放送 「ゴゴスマ」休止。午後1時55分「ぞっこんTV」(番宣)、2時「家、ついて行ってイイですか?」、55分「ぞっこんTV」、3時「ワンダフル競馬 新潟11R『新潟大賞典GIII)』」、4時「ワンダフル競馬SP」、4時50分「Nスタ」、以降通常編成
  • TUTチューリップテレビ 「ニュース6」休止。午後6時15分「チューリップテレビ ニュース&天気」、23分「直撃!とやま流ビジネス戦略」(再)、53分「ハッピータイム」、以降通常編成
  • MRO北陸放送 「レオスタ」を10分間に短縮。午後6時25分「レオスタぷらす」、30分「バナナマンのせっかくグルメ!」(再)
  • UTYテレビ山梨 「ウッティタウン6丁目」休止。午後3時30分「義母と娘ブルース第3話・第4話」、午後5時50分「Nスタ」、以降通常編成
  • SBC信越放送 通常編成
  • SBS静岡放送 通常編成
  • CBCテレビ 通常編成
  • MBS毎日放送 通常編成
  • BSS山陰放送 通常編成
  • RSK山陽放送 「ごじまる」休止。午後4時50分「Nスタ」、以降通常編成。
  • RCC中国放送 「イマなまっ!」休止。午後2時50分「元就。カープ日南キャンプSP」(再)、午後4時50分「Nスタ」、以降通常編成
  • tysテレビ山口 通常編成
  • itvあいテレビ 通常編成
  • KUTVテレビ高知 通常編成
  • RKB毎日放送 「今日感テレビ」休止。午後1時55分「輝け!ニューヒロイン2019」、2時50分「ぴったんこカン・カン」(再)、3時50分「Nスタ」、以降通常編成(「今日感ニュース」は通常通り)
  • NBC長崎放送 「あっぷる」休止。午後3時52分「テレビショッピング」、4時21分「憧れレストラン」、50分「Nスタ」、以降通常編成
  • RKK熊本放送 通常編成
  • OBS大分放送 「今日感テレビ」休止。午後3時「じょんのび日本遺産」、45分「まるんちゃんチェック♪」、50分「Nスタ」、6時15分「OBSイブニングニュース」、25分「NEWSな2人」(再)、55分「オオイタコレクション」、以降通常編成
  • MRT宮崎放送 午後3時50分「激動の30年 宮崎平成回顧」、4時50分「Nスタ」、6時15分「激動の30年 宮崎平成回顧」、55分「お・す・す・め!」(番宣)、以降通常編成
  • MBC南日本放送 「かごしま4」休止。午後3時49分「Nスタ」、6時15分「MBCニューズナウ」、30分「NEWSな2人」、55分「MBCアーカイブス『あの日のふるさと』」
  • RBC琉球放送 午後1時55分「沖縄平成史~県民を揺るがせた重大ニュース~」、4時50分「Nスタ」、以降通常編成

衆院大阪12区補選、ゼロ当確の状況

 21日、統一地方選後半戦と同時に行われた衆院大阪12区、沖縄3区の補欠選挙は、どちらも自民の敗北という結果になりました。沖縄は大方の予想どおりで、五大紙と共同、時事、NHK、民放5系列の全てで、開票前に当選確実が出る「ゼロ当確」となりました。一方で大阪12区は一部がゼロ当確を打ったものの、見送った社も多くありました。

 私の調べによると、大阪12区でゼロ当確としたのは産経新聞共同通信JNN、NNN、FNN、TXN。その後、NHKが午後9時29分、毎日と日経が同32分、朝日とANNが同39分、読売が同45分、時事が同46分に当選確実を報じました。

 なお、共同通信毎日新聞JNN系のMBSの3社は出口調査を合同で実施し、データのみ共有しています*1。各社はこれに独自の取材情報などを加味して当選確実を判断していますが、ゼロ当確か否かが分かれたのが興味深いところです。

深夜の「紙幣刷新」情報、最終版に間に合ったか

 4月9日午前0時半を過ぎた頃、フジテレビがニュース番組「Live News α」で独自ダネを報じました。政府が紙幣を刷新する方針を固めたという内容でした。
www.fnn.jp

 政府は1万円などの紙幣を、20年ぶりに刷新する方針を固め、早ければ9日にも麻生財務相が発表する方向で調整を進めていることがわかった。

 紙幣は、偽造防止などのため、およそ20年周期で紙幣を新しいデザインに変える改刷を行っている。

 政府が検討を進めているのは、新しい1万円札に、「資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一氏。

 5,000円札には、「女子教育の先駆者」と評され、津田塾大学創始者である津田梅子氏。

 1,000円札の肖像画には「近代日本医学の父」といわれる北里柴三郎氏が採用される方向で、最終調整されている。

 前回、紙幣が変更された2004年から20年後の2024年をめどに刷新される方向で、早ければ9日にも麻生財務相が発表する見通し。

 新聞の9日付朝刊紙面の編集は、「13版」(産経の14版など例外あり)がすでに締め切りを過ぎたと思われ、最終版に突っ込めるかどうかの瀬戸際の時間でした。在阪紙面の結果をまとめます。

 まず朝日新聞「14版△」は間に合わず、掲載がありませんでした。

 毎日新聞は追っ掛け版の「14版◇」を製作、1面トップで掲載しました。見出しは「新紙幣、政府検討/渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎」(縦4段)。記事は33行で、3人の顔写真付き。「肖像画を変える準備に入った」と、刷新自体は断定調といっていいと思いますが、具体的な人物については名前をそれぞれ挙げた上で「検討している」止まりでした。見出しの「検討」はここに由来しているものです。変更時期は「数年後をめどに」としました。他に、前回の肖像変更事実や、紙幣様式の決定過程を書いています。

 読売新聞「14版」は掲載なし。

 日経新聞は「14版」の1面、3番手(紙面真ん中)に掲載。見出しは「政府、紙幣刷新へ/1万円札は渋沢栄一」(縦3段)。記事は14行で、肖像は「有力だ」という書き方で3人とも名前を明記。「9日にも発表」とも書かれました。また、改元機運を盛り上げる狙いがあるともしています。

 産経新聞「14版」と大阪日日新聞は当然というべきか、掲載はありませんでした。

 在阪紙面ではありませんが、神戸新聞も1面3番手(紙面真ん中)に共同電を掲載。見出し「政府、紙幣刷新へ/1万円札渋沢栄一、5千円札津田梅子」(縦3段、黒ベタ)で、記事は10行。3人の名前も明記し「採用する」と断定調。9日にも発表する旨も書きました。

 そして福島民友も確認できました。最終版は「8版」ですが、第3社会面が「9版●」となり、左上に記事21行が掲載されています。見出し「千円札、北里柴三郎に/紙幣刷新へ、1万円札は渋沢栄一」(縦3段)。共同電ですが神戸新聞よりも長く掲載。3人を短く紹介する内容が入ったほか、改元に合わせた形になっていることについても触れています。

 一方、福島民報「8版★」は掲載がありませんでした。

 今回見た新聞では、フジがめどとして報じた2024年という刷新の時期を盛り込むことができませんでした。発表自体は改元と合わせて行う狙いがあったと思われますが、刷新自体はそうではないので、日経の原稿や福島民友掲載の共同電はミスリード感が否めません。

 在阪紙と福島民友福島民報大阪府中之島図書館で、神戸新聞は神戸市灘区の通学先の図書館で確認しました。

新聞記事と放送ニュースの文体比較(2)米兵・日本人女性死亡事件

 新聞記事と放送ニュースの文体を比較するシリーズ。今回は事件の一報から、新たに事実が判明していく流れを追っていこうと思います。

 題材にするのは、沖縄県北谷町のアパートで米兵と日本人女性が死亡しているのが見つかった事件のニュースです。

一報段階

47NEWS 2019年4月13日午後1時28分配信
 13日午前7時25分ごろ、沖縄県北谷町桑江のアパートで、男女2人が血を流して倒れていると110番があり、2人とも現場で死亡が確認された。在日米軍は、男性が海兵隊員とみられると明らかにした。米軍関係者によると、男性が日本人女性を殺害し、自殺したという情報がある。
 県警が身元確認を急ぐとともに、詳しい状況を調べている。
 在沖縄米海兵隊共同通信の取材に「米海兵隊第3海兵師団の隊員とみられる人物と、沖縄県民が死亡したことを把握している。大変悲しい事件であり、捜査を全面的に支援する。海軍犯罪捜査局が沖縄県警に協力している」とコメントした。

JFNニュース 2019年4月13日午後2時55分放送】
 けさ、沖縄県北谷町のアパートで男女2人が死亡しているのが見つかり、在日アメリカ軍は、死亡した男性が海兵隊員とみられると明らかにしました。アメリカ軍関係者によりますと、男性が日本人の女性を殺害し、自殺したという情報があるということです。警察は身元の確認を急ぐとともに、詳しい状況を調べています。

 一般に新聞で事件の一報原稿は確定的な事実を先に書く原則があり、具体的にはこの記事のように通報事実、死亡確認から書くというのが普通です。このニュースのバリューは米軍がらみの事件だということにありますが、そこから書くわけではないということです。

 これは放送でもおおむね同じようですが、この原稿では時間の都合上、通報事実は省かれています。

 またこの種の原稿では、新聞が「県警」と書くのに対し、放送では「警察」と呼ぶのも一般的な傾向だと言えます。

身元確認

47NEWS 2019年4月13日午後7時5分配信
 沖縄県北谷町のアパートで13日午前、死亡しているのが見つかった男女は、在沖米海兵隊所属の男性海軍兵(32)と住人の日本人女性(44)で、交際していたとみられることが同日午後、県警などへの取材で分かった。どちらの体にも刃物のようなものによる刺し傷があったことも判明。県警は2人の死因や、トラブルの有無を調べている。
 県警によると、2人は寝室のベッドで倒れていた。女性宅には外部から侵入した形跡はなく、海軍兵は12日夜からこの部屋にいた。
 関係者によると、海軍兵は女性を殺害後、自殺した可能性があるという。

JFNニュース 2019年4月13日午後6時55分放送】
 沖縄県北谷町のアパートできょう午前、男女2人が死亡しているのが見つかった事件で、2人は、アメリ海兵隊の男性海軍兵と、この部屋に住む日本人女性で、交際していたとみられることがわかりました。関係者によりますと、女性を殺害した後自殺した可能性があります。警察は2人の死亡原因やトラブルがなかったかどうかを調べています。

 新聞体では、新たに判明した確定的な事実が、(1)男女の身元、(2)双方の体に刃物のようなものによる刺し傷があったこと、(3)2人が寝室のベッドで倒れていたこと、(4)外部から侵入した形跡がないこと、(5)海軍兵が12日夜から部屋にいたこと、の5点です。

 このうち放送では(1)しか取り上げられていません。JFNニュースの尺が短いことが大要因であるのはもちろんですが、今回のメインファクトが身元の判明と、2人が交際していたとみられることであることから、それ以外の要素を省き、事件の構図が分かりやすくなるようにしたのでは?と推測します。ただ、両方の体に刺し傷があることは、無理心中の可能性に説得力をもたせる要素ではあるため、やはり尺の短さが惜しいなあという気はします。

 また、県警の捜査方針と無理心中の可能性の順番が入れ替わっています。これは本連載第1回でも推論したとおり、放送では関連した話題をひと続きにして、耳で聞いただけでも理解しやすいようにしているものとみられます。

知事反応

47NEWS 2019年4月14日午後7時39分配信
 沖縄県北谷町のアパートで、在沖縄米海兵隊所属の男性海軍兵(32)と、住人の日本人女性(44)が死亡しているのが見つかったことを受け、玉城デニー知事は、在沖縄米軍トップを兼務するエリック・スミス在日海兵隊司令官に「県民の尊い命が失われたことは深い悲しみで、激しい怒りを覚える」と伝えた。うるま市で14日、記者団に明らかにした。
 海軍兵は女性を殺害後、自殺した可能性がある。スミス氏は13日午後、玉城氏に2人が交際していたことや、県警の捜査に全面的に協力することなどを電話で説明した。「ひとえに私の責任だ」とも話したという。

JFNニュース 2019年4月14日午後10時55分放送】
 沖縄県北谷町のアパートで昨日、アメリカ海軍兵の男性日本人の女性が死亡しているのが見つかったことを受け、沖縄県の玉城知事は、沖縄駐留アメリカ軍のトップに対し「県民の命が失われたことに激しい怒りを覚える」と伝えました。死亡していた32歳の海軍兵は、発見されたアパートに住む44歳の日本人女性を殺害した後、自殺した可能性があります。

 死亡した海軍兵の基本的な情報について、新聞体では「在沖縄米海兵隊所属の男性海軍兵(32)」とひと続きに書いているのに対し、放送原稿では1文目で「アメリカ海軍兵の男性」、2文目で「32歳の海軍兵」と所属・性別、年齢を分けて伝えています。一度に聞いて理解できる情報に限りがあることを踏まえて、1文に含める要素を減らす工夫ではないかと思われます。

 また女性の方も、新聞体では「住人の日本人女性(44)」と書いているのを、1文目は「日本人の女性」とし、2文目は「(海軍兵が)発見されたアパートに住む44歳の日本人女性」と書いています。アパートの住人である要素が分離されていることは、海軍兵の例に似ています。また、新聞では2回目以降、単に「女性」と書いていますが、放送では「日本人女性」というキーワードを繰り返しているのも特徴的です。

 なお新聞でも放送でも、原稿の主題を提示する前置きの部分は、「無理心中したとみられるのを受け」などとせず、あくまでも「死亡しているのが見つかったことを受け」としているのもポイントです。無理心中の可能性がまだ流動的だという判断と思われます。

「教科書レベルを学んでる段階でエリート」

 東京大学の入学式であった、名誉教授で社会学者の上野千鶴子氏による祝辞がインターネット上でもなかなかに評判だ。東大のウェブサイトに全文があるので、未読の方はぜひ一読を。細かい点はいろいろと指摘があるようだが、私は大筋として面白くかつ意義深い祝辞だなと思った。東大が今このタイミングで、新入生に贈る祝辞に上野氏を選んだこと自体も含めて、新入生に対するメッセージである。
www.u-tokyo.ac.jp

 私がよく聴いているTBSラジオ荻上チキSession-22」でもこの祝辞が紹介され、荻上氏がコメントしている。
www.tbsradio.jp

 で、祝辞紹介の前段で言われていることが本当にそうだなあと思った。

荻上チキ)僕は今年はね、大学で教鞭をとっていないのでちょっと気が楽なんですけれども。

(南部広美)そういうものですか。

荻上チキ)やっぱりその大学でね、授業をする際に「この大学でこの授業を受けてる段階で……」って。たとえば僕の授業だったらメディア論。「……メディア論の授業を受けてる段階で、あなたたちは世界中で上位1%以内に入るメディア論のエキスパートにもうなったということなんだ」っていう話をするわけです。

(南部広美)はー。

荻上チキ)それは日本の大学進学率は2人に1人。50%程度ですよ。で、世界で見ると、もっともっと少ないわけです。で、日本の中で、たとえば僕が教えていた早稲田大学とかだと、受験戦争を勝ち上がってきて。それで特定の学問を学ぶということになるわけですよ。だからよくあの何かの学問で「教科書レベルしか書いてないな」とか、そういった言い方で本の悪口を言ったり。

「あいつは教科書レベルのことしか学んでないから、その先のこと知らないんだ」っていうような批判するっていうことが、特に学者同士のマウンティングだったりとか、何かの知識自慢の時に出てきたりするんですけども。教科書レベルを学んでる段階でエリートなんですよ。

(南部広美)本当、そう思います。

荻上チキ)で、それは別に褒めているということでもなくて、だからこその自覚が必要ですよっていう話をいつもするんですけれども。

(文字起こしサイト「miyearnZZ Labo」から孫引き)

 僕が通っている大学は東大とか早稲田には当然及ばないけれど、旧帝大の次くらいに位置付けられてはいるので、経済という学問領域に属する人の多さを考えても、まあやはり上位2、3%くらいには入るんだろうとは思う。

 その大学・学部の授業を真面目に受けずに落第したような人間が垂れる能書きでないのは承知の上で、教科書レベルにアクセスできるかどうかというのは確かに重要だなあと思っている。

 特に経済なんて、出自のよく分からない自称経済学者や評論家が珍説を最もらしく唱えることがよくある領域である。研究成果の更新がめまぐるしいこともあって、どれがトンデモか自体を判別するのも難しいという側面はあるが、にしても、である。

 僕はとにかく学問に対して不真面目な学生だったので、大学に来た意味とか、大学で得たものとかを問われると閉口してしまうのだが、それでも一つ自分にとっての価値を見いだせるとしたら、それはその学問の「教科書」を知ることができる場だったというのはあるかもしれない。

 授業には出ない、試験も一夜漬け、みたいなポンコツでも、「あの時勉強してれば…」みたいな後悔の時は定期的に来るもので、それがたまたま暇な時に当たれば教科書を読み直す。取ったことのない授業だったら、シラバスを見て教科書を調べる。GoogleAmazonで調べるよりも圧倒的に「妥当」な本が見つかるわけだ。

 僕は頭が悪いから、自学には限界があるし、本が良くても自らの受容の在り方によって知識が歪み、元も子もなくなるなんてことも多分あるとは思う。だから常にその自己批判はしないといけないのだけど、「教科書レベルから手を付ける」ということがどれほど意義あることかという認識は常に持っておきたい。

更迭とは

 桜田義孝五輪相が10日、自民党高橋比奈子衆院議員のパーティーで「(東日本大震災の)復興よりも大事なのが高橋さん」とあいさつし、発言の責任をとって辞任しました。各社は「辞任」と「更迭」の表現を使っています。

 発言後に桜田氏は記者団に「記憶にありません」と釈明したものの、すぐさま政権や自民党幹部に情報が伝わり、政権幹部が対応を協議した上で桜田氏の辞表提出に至りました。形の上では自ら辞表を出してはいるものの、実質的には更迭です。その意味ではどちらの言葉を使っても間違いではないと思います。

 厳密にするなら、ファクトとしては「辞任」あるいは「辞表提出」でその意味は「更迭」ですから、初報の本記では2段構えで書くのが妥当なのかなと思います。例えば毎日新聞(デジタル記事、4月10日)は「(前略)安倍晋三首相と会い、自らの失言の責任を取って辞任する意向を伝えた。(略)首相が事実上の更迭に踏み切った」と書いています。

 時事通信は一報段階で「更迭」を使いました。「事実上の」も付けず、シンプルに「更迭」と表現しています。

 よく考えると、閣僚本人の意に背いて首相が閣僚を直接辞めさせることを指す言葉としては、更迭は更迭ですが、むしろ憲法68条にある「罷免」と表現するのが適切です。民間職なら「解任」とかになるのでしょうか。

 つまり政治記事で「更迭」と書く場面は大体、事実上の更迭で、逆に言えば「更迭」と書いた時点でもうそれは事実上の更迭と同義なのでしょう。こう考えると「首相が更迭する意向を固めた」という表現は、一報として優れているなあと思ったのです。