きょうも生きています #79

 我が大学は山の斜面をなめるようにキャンパスが広がっている。その関係で図書館を1か所に集中させると不便なため、1~3学部ごとに専門図書館を配置させる分散型を取っている。

 基本的には移動が面倒くさいから不便だなと思うのだが、一方で各館で本棚に並ぶ本が全く違うので、たまに自分の学部のとは違う図書館に足を運ぶと、普段親しみのない知の集積を見るようで楽しくなる。

 同じ図書館に漫然と通っていると、同じ本棚を何度も見て食傷気味になり、アクセス可能な知の総量を無意識に見くびってしまうことがあるように思う。分散型になっているおかげで、そういう怠惰をひっぱたいてくれる。そんなことをふと思った。

(2019.3.20)

新聞記事と放送ニュースの文体比較(1)日米首脳電話会談

 高校の部活動ではドキュメンタリー制作、大学のサークルでは新聞製作に従事したのですが、どちらも足を洗ったいま、放送と新聞では文体にどのような違いがあるのかということに関心を持っています。

 本ブログではきょうから、新聞記事と放送原稿の実例比較をメモとして紹介していきます。異なるソースの記事を使うと比較がしづらいので、共同通信ソースのものを使います。具体的には新聞からは地方紙掲載の共同通信配信記事を参照し、放送は共同配信の放送原稿を使っていることでしられる「JFNニュース」を文字起こしして参照します。

 まだ調査を始めたばかりで具体的に、箇条書きの形で両者の書き換え方法を記述できる段階には至っていません。気付いたことがあれば逐一本ブログでメモしていく形になります。よろしくお願いします。

 なお放送原稿の方は、読点やカッコ、漢字仮名表記、段落替えは私が適当に決めて行っていますので、実際に共同通信が配信した原稿通りになっているわけではありません。

京都新聞 2月21日付朝刊】
 安倍晋三首相は20日夜、トランプ米大統領と電話で会談した。27、28両日にベトナムで開かれる非核化交渉を含む米朝首脳会談に向け、首相は日本人拉致問題の早期解決に協力を要請。自身の考え方を説明し、金正恩キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長に直接伝えるよう求めた。トランプ氏は「自分もよく理解できる。拉致問題を重視する」と伝達を約束した。核・ミサイル問題について緊密に意思疎通を図ると申し合わせた。
 日米両首脳は、トランプ氏が5月26日から来日することも確認した。皇太子さまが5月1日に新天皇に即位された後、最初に会見する国賓となる見通し。
 電話会談後、首相は公邸で記者団に「核、ミサイル、拉致問題の解決に向けて日米のあらゆるレベルで緊密に連携していくことで一致した」と明らかにした。米朝再会談の後、トランプ氏から電話で結果の報告を受けることになったと説明。再会談に関しては「問題解決に結び付き、東アジアの平和と安定につながることを強く期待している」と強調した。
 (以下略)

JFNニュース 2月21日午前0時55分】
 安倍総理は昨夜、アメリカのトランプ大統領と電話で会談し、来週ベトナムで開かれるアメリカと北朝鮮の首脳会談で、日本人拉致問題の早期解決への協力を要請し、トランプ大統領北朝鮮側へ伝達することを約束しました
 安倍総理は記者団に、核・ミサイル・拉致問題の解決に向けて緊密に連携していくことで一致したと表明した上で、米朝首脳再会談の後、トランプ大統領から電話で結果の報告を受けることになったと説明しました
 このほか日米双方は、トランプ大統領が今年5月26日から日本を訪問することも確認しました

 上は放送原稿を段落ごとに色分けし、新聞原稿の内容が一致する部分を同色で塗り分けたものです。

要点列挙か、内容の連続か

 大きく異なるのが段落の順序です。トランプ氏の5月来日確認、という内容は新聞原稿では第2段落なのに対し、放送では最後に来ています。

 新聞原稿、特に共同通信の配信記事は、配信先の新聞社が全文を掲載してくれるとは限らず、紙幅に合わせて一部を削除して掲載されることも多くあります。そこで載せるべき重要な内容を、できるだけ記事の先頭に配置する傾向がみられます。この原稿では首相の記者団に対する説明は、第1段落のより詳しい内容になっており、なくてもニュースの要点は伝わります。

 これに対し放送原稿では、同じ話題は一続きに伝えたほうが、耳だけで聞いても理解しやくなります。

登場人物、数字の削減

 次に新聞原稿で登場する金正恩氏の名前が、放送原稿では単に「北朝鮮側」となっていることも気になります。このニュースは安倍、トランプ両氏が電話会談したことがメイントピックなので、2人以外の人名を出すと、耳で聞いたときに混乱しやすいのかもしれません。

 一方、放送原稿では「名前+肩書」を崩していないのも特徴です。新聞では2度目以降「首相」「トランプ氏」としているのに対し、放送では「安倍総理」「トランプ大統領」と繰り返しています。

 数字についても「20日夜」が「昨夜」、「27、28両日」が「来週」になっています。具体的な数字よりも、放送されている「現在」を基準に、日時を指示語的な言い回しで話したほうが直感的に分かりやすいということでしょうか。

文の長さは「適度」

 新聞原稿からは多くの表現が省略されています。例えば米朝首脳会談に係る「非核化交渉を含む」が省かれています。米朝首脳会談の主要議題が非核化交渉であることを示唆するために修飾されたとみられる節ですが、放送原稿ではあまり多くのトピックを入れ込むと理解の妨げになるので省かれたと思われます。

 一方で一文の長さという点で見ると、放送は必ずしも新聞より短いというわけではなく、むしろ長くなっています。

 この理由はいくつか予想できます。

 一つ目は、放送では主語を省略すると違和感が強いから。文を短く切るということは「〜しました」が何度も登場するわけですが、読む新聞と比べて、聞く放送だと「〜しました」のあとに主語もなく文が始まると、唐突で、誰の話をしているのかつかみにくくなります。

 二つ目は、呼吸のタイミングが多すぎると原稿をすべて読むのにかかる時間が伸びるからです。読点よりも句点のほうが若干、息継ぎに掛ける時間は長くなります。このためあまりに文の数が多いと、必要な時間が若干増えてしまいます。

 三つ目は、意味のまとまりが分かるようにするためです。新聞は段落という視覚的な目印がありますが、放送では息継ぎの長短で理解することになります。文を短く切ると息継ぎの回数が増えるので、どこからどこまでが意味のまとまりかが理解しにくくなることが懸念されます。

 ほかにもあるかもしれませんが、こうした理由から放送原稿において一文が「短ければいい」というわけではなさそうです。

「クロス選」か「ダブル選」か─大阪府知事・市長選巡る新聞表記

 大阪維新の会代表の松井一郎大阪府知事は3日夜、大阪都構想住民投票を巡る公明党との交渉が決裂した場合、吉村洋文大阪市長とともに任期途中で辞職して、ポストを入れ替えて出馬する考えを表明したと、報道各社が伝えています。

 この選挙、朝日新聞は「出直しクロス選」と表現していますが、他社の多くは「ダブル選」と書いています。4日付朝刊はお休みでしたので、発言の初報が掲載された4日付の在阪各紙夕刊から記録します。

 朝日新聞は第1社会面記事ではリード部で「出直しクロス選」と表現。見出しは「クロス選 松井氏明言/『知事のまま出直したらまた選挙 効率悪い』/都構想交渉」とあります。本文中「松井氏は『出直すならクロス(選)』と明言。」とあり、松井氏もクロス選の表現を使っていることが分かります。ちなみに知事、市長を入れ替えて出馬する構想を最初に報じたのは2月17日付の朝日新聞朝刊でした。

 毎日新聞は1面トップで報じ、見出しは「大阪府知事 ダブル選明言/統一選同日 市長と入れ替わり」としています。本文では「知事と市長が入れ替わって出馬する意向を鮮明にした。松井知事がダブル選突入に踏み込んで明言したのは初めて」とあります。

 読売新聞は1面準トップ「松井知事『民意問う』/4月入れ替えダブル選へ」で、本文中は「任期途中で辞職し、4月の統一地方選で知事・市長のダブル選を実施する意向」とあります。

 産経新聞は第2社会面右上ですがややこしい書き方です。見出しは「『皆さんの声聞く』/松井知事、進退とクロス選言及」。本文は「近く辞職して知事・市長のダブル選に挑む考えを明らかにした」とした上で「松井氏が市長選に、吉村氏が知事選に立候補する『入れ替わり(クロス)選』になるとの認識も示した。松井氏が自身の進退とクロス選について明言するのは初めて」と記述。以降は「クロス選」を使っています。

 日経新聞は第1社会面中央上「都構想区割り7日採決/公明非協力なら知事『ダブル選』明言」で、本文も「松井氏と吉村洋文市長を入れ替えて知事・市長のダブル選を実施する方針を明言した」とあります。

解説

 ここからは私見ですが、(1)知事・市長がそろって(2)任期途中に辞職し(3)入れ替わって出馬する──という3要素を一言で言い表せているのは、朝日の「出直しクロス選」だと言えます。読売見出しの「入れ替えダブル選」では(2)の内容が欠けます。

 ただ「出直し」は、その意味するところが何かという点で注意が必要な語とも言えます。一般の首長の出直し選は、任期途中で辞職した前職が同じ首長選挙に立候補し直すことを指します。この場合、公職選挙法259条の2の規定から、前職が再選しても新たな任期は4年間ではなく、当初の任期の残りとなります。

 法律条文に「出直し」の文言があるわけではないものの、法律上特例として区別される条件の選挙を「出直し」と表現してきた報道機関にとって、今回の入れ替え選を「出直し」と表現してよいのかは議論のあるところではないかと思われます。

 また「クロス選」という言葉が維新側の出馬動向に絞った表現であることも、中立的な観点から疑いが付く可能性がありますし、単純に聞き慣れない言葉なのでうまく意味が伝わらないおそれもあります。 

プラネタリウム不得意者は「言葉による補助」を期待しているのか【note更新のお知らせ】

 noteを更新しました。天文関連の知り合いが何人かいて、彼らと話をしていて思い付いたことをまとめたものです。無料記事です。ぜひご一読ください。

note.mu

きょうも生きています #78

f:id:CharlieInTheFog:20190301212910j:plain
 3月1日。就職活動広報解禁日。よってインテックス大阪へ。就活デートなのかデート就活なのか、カップルがわんさか。あんだけいたら嫉妬する気にもならない。前夜からあまり寝ておらず、終日ひどい眠気にさいなまれた。

 朝にはnoteの記事を公開。note編集部の「編集・ライター系の記事まとめ」に選んでいただき、これまでの記事より遥かに多い閲覧数となった。
note.mu

沖縄県民投票、全国紙の見出し一覧

 沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場を移す計画を巡って24日行われた、移設先・名護市辺野古沿岸部の埋め立ての是非を問う県民投票について、全国紙5紙の25日付朝刊の記事・見出し一覧をまとめておきます。いずれも大阪本社発行最終版を基にしています。

 本記事はnote記事の資料編です。本編も併せてお読みください。
note.mu

朝日新聞

▽1面
・トップ「辺野古埋め立て 反対72%/沖縄県民投票/玉城知事『工事中止を』/安倍政権は継続方針/投票率52.48%」
・視点「惰性任せの政権 自省が必要」編集委員・佐藤武
▽2面
・時時刻刻辺野古反対『明確な民意』/43万票 知事選の玉城氏得票超す」「県、軟弱地盤の問題突く」「政権、結果『無視』の構え」
・「本土に住む人が考える番だ」那覇総局長・伊藤聖
・談話「共感広がる工夫必要」東北大大学院の河村和徳准教授(政治学
・談話「無視すれば反発拡大」沖縄国際大の野添文彬准教授(日本外交史)
・談話「抵抗支える法的根拠」明治大の大津浩教授(憲法
▽4面
・「政府の姿勢『評価せず』79%/沖縄県民投票 前年代で『反対』多数/出口調査分析」
・「野党は政府批判『結果受け止めを』」
▽オピニオン面
・社説「沖縄県民投票 結果に真摯に向きあえ」
▽特集面(沖縄県民の声と写真の特集)
・沖縄2019「この思い 届け」(リード部見出し)
・「故郷の海が」
・「怒らないと」
・「言えないさ」
・「県外の人も」
・「平和守って」
・「なぜ沖縄に」
▽第1社会面
・「NO 対話のために/辺野古工事強行 若者動く/沖縄県民投票」「『民主主義 発展の一歩』/呼びかけた元山さん」
・「まだまだここから/基地のこと 初めて深く考えた」

毎日新聞

▽1面
・「辺野古 反対7割超/玉城氏、日米に通知へ/43万票 知事選上回る/沖縄県民投票/投票率52.48%」
・「政府受け止めよ/玉城知事」
▽2面
・解説「国に異議の矢/重い負担 考慮の末」那覇支局長・遠藤孝康
・ことば「普天間飛行場移設問題」
・「自民支持4割弱『反対』/本社出口調査
▽3面
・クローズアップ2019「沖縄 民意の盾/県『軟弱地盤』で攻勢」「静観の政府 移設継続」
・ミニ論点「国 対話で解決策探れ」前岩国市長・井原勝介
・ミニ論点「反対表明 草の根の力」沖縄大学長・仲地博氏
▽オピニオン面
・社説「『辺野古』反対が多数/もはや埋め立てはやめよ」
▽第1社会面
・「諦めぬ 沖縄の意志/辺野古県民投票/何度でも基地NO」
・「次世代 抵抗のスタート」
▽第2社会面
・「許されぬ 見ぬふり/ヤマトの人も考えて/リトル沖縄 大阪の70歳」
・「ほご繰り返し23年」
・「大阪駅でも反対多数/市民団体がシール投票」

読売新聞

▽1面
・「辺野古埋め立て『反対』71% 県民投票」
▽2面
・「沖縄米基地『役立つ』59%/辺野古 賛成36%・反対47%/本社世論調査
▽3面
・スキャナー「投票率52% 広がり欠く/沖縄県民投票/『反対』最多 影響は限定的」「政府、工事推進へ/さらなる法廷闘争も」
▽9面
・本社全国世論調査結果

産経新聞

▽1面
・「沖縄県民投票/辺野古『反対』7割超/有権者の4分の1超 首相と米に通知へ」
▽2面
・主張「沖縄県民投票/国は移設を粘り強く説け」
▽3面
・「県民投票 のぞく政治的思惑/オール沖縄野党共闘のモデルに』」「自民支持層でも『反対』48% 出口調査
▽5面
・「野党、移設中止求める声/沖縄県民投票 自民『国民の生命守る』」

日経新聞

▽1面
・「辺野古移設 反対7割超/沖縄県民投票 知事、首相と会談へ」
▽2面
・「辺野古移設 解けぬ対立/反対 知事選獲得票超す/政府、埋め立て方針を堅持」「自民支持層も反対多数」
・識者談話「一時の世論切りとる危険」岩井奉信・日本大教授(政治学
・識者談話「工事進めれば不信招く」岡本三彦・東海大教授(行政学
▽第1社会面
・「沖縄に目を 葛藤の一票/県民投票 反対7割超/本土に思い 賛否超え/『声上げないと』/『2択では無理』/『県は説明不足』」
・識者談話「全国民で議論を」高橋哲哉・東京大大学院教授(哲学)
・「玉城知事『重要な意義』」

共同通信配信のJFNニュースでミスを見つけたのでメモ

 FM放送局のネットワーク「JFN」加盟局の一部で放送されている「JFNニュース」は、共同通信が配信する原稿を使っていることが知られています。このことを踏まえて、新聞向けの記事と放送局向けの原稿の文体の違いを調べようと、JFNニュースの内容を文字起こしする作業をしていたところ、内容に誤りを見つけてしまいました。これがいかにも「らしい」ミスだなと思いましたので、メモしておきます。

 2月20日午前0時55分放送のJFNニューストップ項目は、安倍首相の連続在職日数が歴代2位タイになったという話題でした。このニュースの原稿全文は次のとおりです(読点はテキトー)。

 安倍総理大臣の連続在職日数が、今日で第2次安倍内閣の発足から2248日となり、吉田茂元総理の第2次から第5次内閣と並ぶ歴代2位となりました。安倍総理はこのまま政権を保った場合、今年6月に伊藤博文、8月に佐藤栄作元総理と並び、11月20日には戦前の桂太郎を抜いて歴代単独1位となります。

 おかしいところがあることに気が付きましたでしょうか。

 では、ウェブで配信された同じニュースの記事を見てみます。ウェブ記事は新聞向けの原稿を要約・短縮したものになっていて、文体は新聞とほぼ同じです。

 安倍晋三首相は20日、2012年12月に首相に返り咲いた第2次安倍内閣発足からの連続在職日数が2248日となり、吉田茂元首相の第2次~第5次内閣と並ぶ歴代2位となった。連続在職日数の歴代1位は、佐藤栄作の2798日。

 安倍首相は2日後の22日には、06年からの第1次内閣を含めた通算日数でも、吉田内閣の通算と同じ2616日に到達。歴代4位タイとなる見通しだ。通算は、戦前の桂太郎が2886日で1位、佐藤が2位で、初代首相を務めた伊藤博文の2720日が3位だ。

 このまま政権を保った場合、6月に伊藤、8月に佐藤と並ぶ。11月20日に桂を抜いて歴代単独1位となる。

 放送原稿はウェブ原稿の第1、3段落の部分を要約した内容になっています。第1段落は連続日数の話をしているのに対し、第3段落は第2段落を受けて通算日数の話をしています。ところがこのことを踏まえずに、放送原稿では単純に両段落をドッキングさせて要約しているのでおかしなことになっています。「歴代2位となりました」と言いながら、さらに上に伊藤博文佐藤栄作桂太郎がいるという珍妙な展開になってしまっています。

 共同通信の放送局向けの原稿は、新聞向け原稿を編集し直したものが中心になっています。単に「だ・である」を「です・ます」に変えているだけではないのが今の例でもよく分かります。ゆえに、こうした編集ミスもまれに起こってしまうということなんでしょうか。いかにも「らしい」ミスだなあと感じます。

記事リンク

ウェブ原稿は以下リンク。
this.kiji.is

 放送音源はRadikoプレミアムのタイムフリー機能で聴取可能。以下はFM大分での放送。
radiko.jp