近藤美矩ニュースデスク

 暇なときはTBSラジオをずっと聴いている。日中の帯番組では1、2時間くらいおきにニュースのコーナーがあり、これをニュースデスクという係の人が担当している。中村尚登さんや柴田秀一さん、今はテレビに異動されてしまったが内山研二さんあたりが有名だが、とても個性的なデスクがいる。

 近藤美矩さん。今年75歳になる大ベテランだが、この人の伝え方がとても面白い。

 1月5日午前11時2分、関東地方で緊急地震速報が流れた。結果的には震度3で、気象庁のシステムが、ほぼ同時に北陸で起きた地震と区別ができずに地震の規模を過大評価した結果だとみられている。TBSラジオでは「ジェーン・スー生活は踊る」の放送中だった。自動アナウンスがしばらく流れた後、堀井美香アナウンサーからニュースデスクへ呼びかけがなされた後、近藤さんが登場した。

 はい、あのー先ほど緊急地震速報が出されたんですが、あー茨城で、茨城南部で震度3を記録しております。えー11時、11時2分頃の地震は、津波の心配はないということです。また詳しい情報が入ったらお伝えします。

 ここまでは普通だ。さてこの約55分後、正午の定時ニュースで近藤さんの個性が発揮される。

(スー)
 ここでお昼のニュースです。ニュースデスクの近藤美矩さん、お願いします。
(近藤)
 はい、今年もよろしくお願いします。
(スー)
 お願いします。
(近藤)
 まず何と言っても、あのー緊急地震速報についてお伝えしたいと思うんですが、お騒がせの結果となったようです。

 きょう午前11時すぎに関東地方で緊急地震速報が出たんですが、最大震度は3でした。
 気象庁の説明はこうです。
 ほぼ同時に富山県で別の地震が起きたために、過大評価になった可能性がある、ということで、さらに調べているということです。
 茨城県沖を震源とするマグニチュード4.4の地震は午前11時2分頃でした。で、気象庁はこの地震を観測した後、関東地方の1都6県と福島県緊急地震速報を発表したんですが、最大震度は、茨城県神栖市で観測された震度3でした。
 で、同じ、11時2分頃に、富山県西部を震源とするマグニチュード3.9の地震も発生しておりました。で、茨城と富山で起きたこの二つの地震を、コンピューターが区別できずに揺れの強さを計算したために、結果的に過大評価となって緊急地震速報を出したと、おー、可能性があるということで、気象庁はさらに調べています。
 こういうことでした。

 淡々としたニュース原稿なら「午前11時2分頃、関東地方と福島県緊急地震速報が出ましたが、最大震度は茨城県神栖市の震度3にとどまりました。ほぼ同時に富山県で発生した別の地震と区別できず、過大評価した可能性があるということです」くらいの文章になると思う。

 これをいわば因数分解するかのごとく、伝える順番を整理している。

 緊急地震速報は放送を聞いている大半の人がさっき経験したばかりのこと。ならばニュースの結論は「なぜ速報が出たのか」の答えである。だから近藤さんは、「気象庁の説明はこうです」と種明かしの前に案内を入れている。そして概要を述べた後詳しく説明し「こういうことでした」と種明かしを締めくくる。

 非常に理解しやすい伝え方で、やってみると分かるがなかなかできる芸当ではない。さすが大ベテランという感じである。

 最近TBSラジオのニュースデスクには新しく着任した人が増えている。ぜひ近藤さんを見習いつつ、自分なりの伝え方を確立していってほしい。一リスナーとしての願いである。