また夢ンなるといけねえ

しがない男子大学生。新聞サークルの記者をしている。堺、六甲、西中島南方が生活の拠点。

見出しの付け方

 新聞の見出しは、記事の要点を一言で表すことで読者に内容の理解を促す仕掛けだ。今度、新聞部で見出しの付け方講座を開くので、その教材に使う実例を書き留める。

 なお新聞の見出しは平均的な重要度の記事で、主見出しと脇見出しの2本となることが多いが、1本あたり10字前後にまとまるのが良いとされる。

 今回は以下の原稿を例に見出しを作ってみよう*1

 コウノトリの保護・増殖活動に取り組む兵庫県立コウノトリの郷公園豊岡市)は12日、秋田県仙北市コウノトリの飛来が確認された、と発表した。これで国内で放鳥が始まった2005年以降、47都道府県すべてでコウノトリの飛来が確認されたことになる。

 秋田市在住の会社員Aさん(41)が11日、電柱の上にいるコウノトリを撮影し、郷公園に写真を提供した。装着していた足輪から、15年3月に千葉県野田市の飼育施設で生まれ、その後放鳥されたメスと確認された。

 国内の野生のコウノトリは46年前にいったん絶滅。人工繁殖を経て、05年に豊岡市で放鳥されて以来、野外の生息数が徐々に増え、今年6月には100羽に到達していた。郷公園のB園長は「コウノトリの野生復帰は、私たちが掲げた『全国へ、そして世界へ』の合言葉がひとつ実現し、新しいステージへと入ったと確信しています」とコメントした。(藤本久格)

 この記事の結論は「コウノトリの飛来が、国内で放鳥が始まった2005年以降、47都道府県すべてで確認された」ということ。

コウノトリの飛来が国内で放鳥が始まった2005年以降、47都道府県すべてで確認された

 まずは内容を変えずに、もっと本質を表せるように言い換えられる部分がないかを検討する。「国内で放鳥が始まった2005年以降」は始まった年に意味があるわけではなく、それだけ時間がかかったということのほうが重要。そこで「国内で放鳥が始まってから12年で」と変えてみよう。また「47都道府県すべてで」は47という数字ではなく、全てでということに意味がある。日本人なら都道府県の数が47なのは常識だし「全都道府県で」で十分だろう。

コウノトリの飛来が国内で放鳥が始まってから12年で、全都道府県で確認された

 次に「常識的な部分」を抜く。今回の記事の結論は「全都道府県で確認された」という話。ならば「国内」の話をしているのは半ば当然と言えるので「国内で」は抜ける。*2

コウノトリの飛来が放鳥が始まってから12年で、全都道府県で確認された

 最後に順番、助詞を抜いたり、動詞を名詞にしたりする。ここで注意が必要なのは、助詞をすべて抜くと、能動態か受動態かや動作の方向などが分からなくなるので良くないとされている*3

コウノトリの飛来 全都道府県で確認 放鳥開始後12年で

 さてここで再検討してみよう。「飛来」と「飛来を確認」は微妙に意味が違うが、人間が確認して初めて事実として認識されニュースになることを考えると、文字数が限られる見出しでは「確認」は省いてもいい。また「全都道府県」とほぼ同じ意味の言葉として「全国」に入れ替えるのも、見出しなら許容だろう。

コウノトリ全国に飛来 放鳥開始後12年で

 これで主見出し10字、脇見出し9字にまで縮まった。

 さてこの話題の各紙電子版の見出しは次のようになった*4

▽朝日 コウノトリ、ついに全都道府県で確認 放鳥開始後12年
▽神戸 コウノトリが秋田に飛来 全都道府県で確認
▽道新 コウノトリ、全国に飛来 秋田で確認、野生復帰進む
▽時事 コウノトリ全国の空に=放鳥12年、最後は秋田

 見出しや原稿前半に何を取るかが異なった。新聞の文体は重要な結論を先に書くのが基本なので「何が重要か」をどう考えるかが各社によって分かれたことになる。さらに見出しをつけるにあたって「何が常識か」を考えながら省いていったことを考えると、その認識も各社によって違う。

 例えば「コウノトリの飛来が全都道府県で確認されること」が「コウノトリの野生復帰が進んでいること」を意味すると見出しで説明してあげる必要があったかどうかの判断。道新は原稿でも第1段落にこの話を盛り込んでいるが、見出しにも盛り込んだことになる。逆に常識的に分かるだろう、という発想なら「12年かかった」という話のほうを見出しに入れることになるだろう。

 時事が「全国に飛来」を「全国の空に」としたのは味が出ていて良い。12年かかってやっとコウノトリが全国の空に飛ぶようになった、というストーリーから人々の苦労もうかがえる。あえて最優秀作を選ぶとすれば、この4社の中では時事かな。

*1:朝日新聞デジタル、2017年8月12日配信。個人名は記者署名以外アルファベットに置き換えた。

*2:他に「常識的な部分」の例を挙げてみよう。イベントに関する記事なら「開催」は普通省ける。制度なら「中止」「変更」はニュースの核心なので省けないが、「実施」は普通なので省ける。また「導入」も省けることが多い。「教員免許、来年に更新制導入」なら「教員免許更新制、来年から」で十分。

*3:この禁じ手には、たいてい熟語ばかりになるので「戒名」という名前がついている。

*4:グーグルのニュース検索でヒットしたものを記載。