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また夢ンなるといけねえ

しがない男子大学生。新聞サークルの記者をしている。堺、六甲、西中島南方が生活の拠点。

クラスのアイドル

 「クラスのイケてる女子」の中にもいろいろあって、彼氏を取っ替え引っ替えしてるような人もいれば、男子が健全なあこがれを抱く対象としての女子というのもいたな、とふと思った。

 僕の高校時代にも、可愛らしくて気配り上手で、リーダー的な存在ではないけどその女子の言うことにはみんななんとなく従っている、という感じの女の子がいた。みんなが健全なあこがれとして、その子を一目置いている。クラスのアイドル、というのはこういう人のことを言うのだろうな、と今になって思う。

 クラスのアイドルだったその子については、浮いた話をあまり聞かなかった。2年の時に、クラスのイケメンと付き合ったという話はあったが結局はすぐに別れてしまったらしい。そのイケメン以外で告白した男子の話も聞いたことがなかった。「アイドルではあるけど、付き合うとなると話は別」と考える男子が多かったのだろうか。

 さて、モテない人間というのは往々にして、その手の機微が読めない割に理想は高いことがある。身の程も知らないで、イケてる女子に恋心を抱いてしまう、そんなダメな男は周りにいくらでもいた。

 僕もその一人だった。モテない男子のグループで、クラスでも別次元扱いだったから、女子とじっくり話すことなんてほとんどない。昼食も放課後も男子ばっかりで馬鹿話をしているだけ。女子を知らないから余計に、女子に対する理想が膨らんでいく、典型的なダメ男である。



 しかし高校2年の頃になると、どういう経緯でそうなったのかは記憶にないが、知らないうちに女子数人も僕の「友達コミュニティ」に入っていて、普通にしゃべっていた。今から考えれば不思議だが、それに何の違和感もなかった。 異性として意識することもなく、仲間としての扱いを互いにしていた。

 夏の短縮授業期間、放課後に友達の男子と二人で高校の近くのファストフード店に入りしゃべっていた時、突然その友達は言った。「あの子のことどう思う?」。僕はなんとも思っていなかったから質問の意味がわからなかった。友達は渋い顔をしていた。どうも女子がコミュニティに入ってきたことに違和感を感じていたようだ。いや、拒絶感といっても良いかもしれない。「俺は嫌やなあ」とまで言っていたし。

 結果的には、コミュニティから彼を含めた何人かの男子は距離を置き始めた。残った僕らと女子何人の間でコミュニティは維持されていたが、その性質は少し異なるものになり、最終的には色恋沙汰も起きた。 彼が言っていた「女子が入るとややこしくなる」という言葉は、現実になってしまったとも言える。

 僕らのコミュニティに入ってきた女子は、クラスの中でも多少異質で、アイドルには到底ならない。ある者は確かに可愛らしくはあったが、性格に難はあるし、趣味もメインストリームにはないし、おしゃれのセンスが図抜けているというわけでもない。またある者はひょうきんで面白いやつだったが、決して美人ではないし、性格に難もあるし、趣味もなかなか変わっていた。いわゆる「サークルクラッシャー」的な女子ではさらさらなかったし、その後に起きる色恋沙汰のゴタゴタも、サークルクラッシュ的な文脈で起きたわけではなかった。



 実は、機微を知らなかった時代、無謀にもクラスのアイドルだった女子に告白したことがある。当然玉砕したが、本当に消したい過去、恥ずかしいだけの過去である。

 その後、属するコミュニティが男子だけのものから、男女共同のものになり、女子に対する高すぎる理想も消えた。色恋沙汰の当事者でもあった僕が好きになったのは、可愛らしいほうの女子ではなく、ひょうきんな女子のほうだった。まあ付き合うことはかなわなかったのだけど。

 言っておくが別に「身の程を知り、現実的になった」わけではない。本当に好きになった。だけど、相手は別にモテそうな人ではないのも確かで、驚きを以て受け止めた友達も少なくなかった。



 今、僕は60人ほどのインカレサークルで新聞を作っている。入稿期間には男女共に編集室に詰め、徹夜で編集作業にとりかかる。この歳だから、色恋沙汰も普通にある。そしてやはり、健全なアイドルポジションの女子もいて、美人なのに引く手数多という感じでもない人が何人か居る。そのあたりはみんな大人なのかなと思う。

 僕はこのサークルで色恋をしようという気がさらさらない。もちろんできるとも思っていない。ただ、コミュニティの中で起きている色恋沙汰や、色恋にもならない男女間の視線のやり取りを見ていると、高校時代の微妙で一種危うさをはらむ空気感を思い出す。