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また夢ンなるといけねえ

しがない男子大学生。新聞サークルの記者をしている。堺、六甲、西中島南方が生活の拠点。

別れと日常

先日,年内いっぱいの海外留学に旅立つ親友の女の子を空港まで見送りに行った。彼女は高校時代からの付き合いで,いろいろとまあ,すったもんだもあったが,何だかんだで仲良くしている。見送りには僕以外にも,彼女の親友2人と彼女の恋人も駆けつけていた。

思い返してみれば,僕の19年の人生でこの手の別れは多くない。印象に残っているのは一つだけだ。

小学生のころ僕はサッカー少年だった。ほとんど上達せずに落ちこぼれそのものだったが,所属人数が少なかったために僕もよく試合に出場させられていた。あるとき,親の転勤で九州へ行くことになったクラブメイトがいた。彼はクラブの同学年のなかでは主力メンバーに入っていた。落ちこぼれの僕は普通,そういう主力メンバーとは距離を置いていたのだが,なぜか彼はとはそこそこ親しくしていた。

いよいよ彼の最後の試合の日。なじみのクラブが毎年開催していた,親善の意味合いも込められた大会だった。僕はこの日も案の定,試合には出たくなかったが,監督は僕を出場させた。やる気もないので怒られない程度に気を抜いてテキトーにやっていたのだが,たまたまパスを受けた僕は,左前方にサイドから上がってきた彼を見つけ,パスを出した。すると彼は上手くトラップ(ボールを受けとること)してそのままシュート。これが綺麗にゴールに入り得点となった。それが彼の大阪での最後の得点になったが,僕のアシスト・彼のゴールという,別れにはもってこいの展開となった。

そんなことを思い出していると,バスは空港についた。僕が一番乗りだった。次第に他のメンバーも集まり,留学に旅立つ当人も到着した。

僕は,恋人も来ていることだしドラマチックな別れになったら可笑しいなと思っていた。僕は持ってきたデジカメで彼女を中心にみんなで並んで写真を撮った。急いで印刷機へ走りプリントして彼女に手渡した。すると,このメンツではおなじみの写真ツッコミ大会が始まる。誰の目が死んでいるだの,誰のポーズが変だの,しょうもない話である。

旅行代理店の人がいろいろと説明を始める。見送りの僕らは少し離れたところで談笑していた。それも,とりとめもないバカ話。彼女が荷物を預け,チェックインし,いよいよ出発口前の列に並ぼうかというとき,僕らは彼女と握手を交わした。また,冬に会おう,ただそれだけしか話していない。

やがて列は進み,彼女は出発口へと消えていった。僕らは手を振った。その後,僕らは展望台に移動して離陸を見届けた。そこでもただいつも通りの会話しかなかった。

ドラマチックな別れはそうあるものではない。別に彼女とはインターネットで留学中もやりとりするし,僕らも僕らの日常が続く。思えば空港は,別れと再会が日常の地だ。日常がこれまでも,これからも果てしなく続くんだということを噛み締めながら,僕らは,また一機空へ飛んでいくのを見つめていた。