また夢ンなるといけねえ

しがない男子大学生。新聞サークルの記者をしている。堺、六甲、西中島南方が生活の拠点。

悪いのは全部「またぎ編成」だ!

明後日は国公立大学の前期試験である。2次の学力がさほど高くない僕は,センター試験である程度の余裕を稼いだのでなんとかそれで振り切りたいところなのだがこればっかりは当日になってみないとわからない。とりあえずアーバンネットワークがしっかり動いてくれることを祈っている。

センター試験と言えば,今年の英語の問題は去年に引き続き新形式の問題が出題され,話題をよんだ。平均点自体は前年度より2.6ポイントの減少にとどまったし[注1],難易度も昨年並みと評価されている[注2]が,それでも受験生を動揺させたのは間違いない。だって僕も動揺したんだもの。点数はしっかり取ったけど。

で,その英語で放送マニアを興奮させる問題が出題された。パラグラフの中からまとまりをよくするために除いた方がいい文を選択せよという問題で,次のような文章が出た。

 過去において,ほとんどの日本のテレビ番組は,ちょうど正時に始まり,また終わっていた。①テレビ番組は,テレビ局ごとに相違はあるが,たいがい早朝の時間帯はニュース番組で,夕方の時間帯はバラエティ番組で占められている。②競争のため,放送局の中には少し早く番組を始めることで,ライバル局より有利になろうとするものがあった。③1つの番組の終り近くにチャンネルを次々回し始める人々が多いので,放送局は,もし番組を数分早く始めれば,人々はそれを見始めるだろうと考えた。④もう1つの戦略は,人々が1つのチャンネルに貼り付いて,他のチャンネルの番組の開始を見逃すように,人気番組を正時より少し後に終わらせることだった。今では多くのテレビ局がこうした戦略を採用したので,どの局の有利性も失われてしまった。それでも,多くのテレビ局は視聴者を逃すことを恐れて,この慣例を続けている。
 
(※出題は英文で,これは東進ハイスクールの解答速報(リンク)に掲載された訳。丸囲み数字は選択肢番号。取り除くべき文章は①。)
おお,これはいわゆる「またぎ編成」ってやつじゃねえか! こんなニッチな話が試験問題に登場する時代になったのか……と,解きながら感慨に浸ったものである。放送マニアやっててよかったと思う瞬間だった。もちろん自己採点では正解している。

ところで,放送マニアとしてずっと気になっているまたぎ編成がある。というかこれはまたぎ編成に含めてよいのかどうか迷う事例だ。それは,NHKニュース7」が正時より5秒早く始まる事例である。午後7時から30分間,年末年始も休まず放送される完全帯番組の「NHKニュース7」のスタート時刻は午後6時59分55秒である。もちろん地上デジタル放送の技術上のタイムラグがあるので,実際にテレビ画面上でスタートするは午後6時59分57秒くらいになるのだが,いずれにせよ5秒だけフライングスタートしていることになる。我が家のHDDレコーダーで番組を予約録画すると,冒頭3秒間ほどが切れて録画されるから,改編の時期になるとオープニングを収録するために1分早く録画をスタートさせる設定をする。

なぜ5秒早く始まるのか。それは今は亡き時報の枠の名残である。かつて,NHKの総合テレビでは午前7時・正午・午後7時に時報が独立して放送されていたが,ある時期から,それぞれのニュース番組のオープニングと一体化されて放送されるようになった。しかし2003年12月,東京・大阪・名古屋で地上デジタル放送が始まる。すると,先にも触れたように地上デジタル放送ではタイムラグが生じるために,NHKでは2004年3月末に総合テレビでの時報放送が撤廃された。とはいうものの,音や秒針による時報が無くなっただけであって,正時になった瞬間をあいまいにしたうえで,それまで同様午前7時・正午・午後7時になったということは画面上で表現されている。そういうわけで,「NHKニュースおはよう日本」7時台,正午の「NHKニュース」,「NHKニュース7」の3番組の5秒フライングスタートは残されている。

問題は,正午の「NHKニュース」は今も正午になったということがわかるオープニングCGを採用しているのだが,「NHKニュースおはよう日本」,「NHKニュース7」はもはや時刻を示すようなオープニングCGではなくなった。番組開始5秒後に何かアクションがあるとか,5秒ぴったりでオープニングが完結するとかでもない。それまでの時間を示すためのフライングスタートは,今は単なるフライングスタートに成り下がってしまった……(意見には個人差があります)。最近は,「NHKニュース7」で,オープニングCGを省略することも頻繁になった。ますます,正時の存在感が薄くなっている

時計がデジタルになり,分刻み・秒刻みが当たり前になった現代。それまでのアナログな連続した時間の価値観では,区切りである正時は非常に大きな存在感があった。それが秒単位のデジタルな単位的な時間の価値観になったことで,正時は他の秒と同じように取り扱われる傾向が強まっていると思う。その価値観の変化にまたぎ編成が大きく影響しているのではないかと。時報的なものが軽視されるなかでテレビ番組のオープニングはどんどん省略されている。夕方の報道番組が平気で3時間も放送される中で,だらだらと放送が流れ続ける現象の元凶はまたぎ編成だと主張するのはいささか大げさすぎるだろうか。

それでもいま,テレビ朝日徹子の部屋」が正午スタートをアピールすべく,オープニングで不正確ではあるが時報のような演出をしている。NHKでも「Eテレ2355」「Eテレ0655」でエンディングに時報のような演出がある。やはり人々は時報的なものを求めているのかもしれない(?)。だから,なんとか,生活にメリハリをつける時報的なものを残してほしいと放送マニアの僕は切に願うのである。

 注釈  
  1. 大学入試センター「平成27年度大学入試センター試験実施結果の概要」10ページ。(リンク
  2. 河合塾「2015年度大学入試センター速報」(リンク